背景
樹脂ペレットを加熱乾燥するとVOCガス(揮発性化合物)が発生します。発生したVOCガスは、乾燥機内部で濃度が高くなり、飽和状態となると析出して乾燥経路の閉塞による乾燥不良、機器故障の原因となります。また、乾燥機から排気されると工場環境の悪化や作業者への健康被害等のおそれがあります。そこで、乾燥機内部で発生するVOCガスの蓄積濃度を減少させ析出物の発生を抑制し、乾燥機から排気されるVOCガスを分解除去することで樹脂ペレットの品質安定と工場の環境改善を目指しました。
課題
樹脂ペレットの乾燥機には、乾燥時に発生する水分を吸着材で吸脱着して乾燥する方式のものがあり、水分吸着に用いられる吸着材は主に細孔径4Å前後の親水性ゼオライトが用いられます。しかし、親水性ゼオライトではVOCガスを吸着することができません。
本技術の説明
図1の吸着筒内ではハニカム状の吸着材が回転して乾燥戻り空気の水分吸着と加熱エアによる再生を繰り返しています。本技術ではまず、VOCガスを吸着できる細孔径約6Åの疎水性ゼオライトを組み合わせた吸着材を使用してVOCガスの処理を試みています。これにより、乾燥機内を循環する空気からVOCガスを吸着して濃度を下げています。
さらに、VOCガスは完全に燃焼することで分解可能ですが多くは750~850℃の高温で加熱する必要があります。これではエネルギー消費が大きくなってしまうため、より低温(200℃前後)で分解可能な触媒により処理します。
効果
図2はVOCガス吸着効果を示す実験結果のグラフです。対象として使用した樹脂ペレットはSPS(シンジオタクチックポリスチレン)とPBT(ポリブチレンテレフタレート)で、それぞれ乾燥時の加熱によりVOCガスを発生するものです。グラフは横軸が運転時間、縦軸がVOCガス濃度を示します。各材料について吸着筒前後のVOCガス濃度推移を示しており、疎水性ゼオライトの効果で吸着筒通過後には濃度が50-80%に下げられています。
また、吸着筒の再生排気についても処理した効果を図3に示します。吸着されたVOCは吸着筒の再生に伴い再生排気に含まれますが、図1で示したように排気ラインに触媒を設けることで外部環境に排出される前に分解が可能です。SPS、PBTの場合いずれもVOCガスは90%以上分解されており、現場環境への排出を低減しています。